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識別力(商標法3条)で拒絶される名前の型 — 条文ベースで解説

公開: 2026年6月11日 / 商標まる編集部(株式会社イネブラ)

商標は「誰の商品・サービスかを見分けるための目印」です。そのため、目印として機能しない名前 — 専門用語でいう識別力(自他商品・役務識別力)のない商標 — は登録できません。その類型を定めているのが商標法3条1項の各号です。本記事では、拒絶されやすい名前の6つの型を、条文に沿って解説します。

目次
  1. 商標法3条の全体構造
  2. 型① 普通名称(1号)
  3. 型② 慣用商標(2号)
  4. 型③ 記述的商標 — 産地・品質・効能など(3号)
  5. 型④ ありふれた氏・名称(4号)
  6. 型⑤ 極めて簡単でありふれた標章(5号)
  7. 型⑥ その他、識別できない商標(6号)
  8. 例外: 使い込んで識別力を獲得した場合(3条2項)
  9. 識別力があっても拒絶される場合(4条)

1. 商標法3条の全体構造

商標法3条1項は「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる」と定め、登録できない商標を1号から6号まで列挙しています。つまり原則は登録OK、例外として6つの型に当てはまると拒絶、という構造です。

ひとことで
1号普通名称商品・サービスそのものの名前
2号慣用商標業界でみんなが使い慣わしている表示
3号記述的商標産地・品質・効能などの説明にすぎない表示
4号ありふれた氏・名称ありふれた苗字・会社名の表示
5号極めて簡単な標章1〜2文字や単純な図形など
6号その他識別力なし上記以外で目印にならないもの(受け皿規定)

2. 型① 普通名称(1号)

その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(3条1項1号)

商品・サービスそのものを指す名前です。例えば、商品「りんご」について「りんご」「アップル」とだけ書いた商標は、誰の商品かを区別する目印になりません。ポイントは2つあります。

3. 型② 慣用商標(2号)

その商品又は役務について慣用されている商標(3条1項2号)

もとは特定の誰かの商標だったとしても、同業者の間で広く使われるようになり、目印としての働きを失った表示です。業界で誰もが使っている定番の呼び名・表示は、特定の一社に独占させるべきではない、という趣旨です。

4. 型③ 記述的商標 — 産地・品質・効能など(3号)

その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状…(中略)…又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途…(中略)…を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(3条1項3号)

実務で最も多くぶつかる型です。商品・サービスの特徴の説明(記述)にすぎない表示は、(a)誰もが使いたい表示なので独占に適さず、(b)目印としても機能しにくい、という理由で登録できません。次のような要素「のみ」からなる名前は要注意です。

逆に言えば、説明的な語を含んでいても、造語性のある語と組み合わせる、説明から一段ひねった表現にすることで「のみ」から外れる余地があります(個別の判断は案件ごとに異なります)。

5. 型④ ありふれた氏・名称(4号)

ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(3条1項4号)

ありふれた苗字(氏)や、ありふれた名称(「◯◯商店」「◯◯工業」のような、ありふれた氏に業種名等を組み合わせた名称を含む)を普通の書体で表しただけの商標です。同姓の事業者が多数存在しうるため、一人に独占させると不都合だからです。屋号を苗字でつけている場合は特に確認したい型です。

6. 型⑤ 極めて簡単でありふれた標章(5号)

極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標(3条1項5号)

1〜2文字のローマ字や数字、単純な丸・三角・直線といった、極めて簡単でありふれた標章です。短すぎる名前・単純すぎるマークは目印として弱い、という型です。

7. 型⑥ その他、識別できない商標(6号)

前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標(3条1項6号)

1〜5号のどれにも当たらないが、やはり目印として機能しない商標を拒絶するための受け皿規定です。実務上は、単なるキャッチフレーズ・標語、元号や年号の表示、単なる装飾的な背景などがこの号で問題になることがあります。

8. 例外: 使い込んで識別力を獲得した場合(3条2項)

前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。(3条2項)

3号(記述的)・4号(ありふれた氏)・5号(極めて簡単)に当たる商標でも、長年の使用の結果、「この表示といえばあの会社」と需要者が認識できるようになった場合には登録の道があります(使用による識別力の獲得)。ただし、それを示す客観的な証拠(使用期間・販売実績・広告など)の立証が必要となる制度であり、立証の要否・程度の見極めは弁理士の専門領域です。

9. 識別力があっても拒絶される場合(4条)

3条をクリアしても、商標法4条1項の不登録事由に当たれば登録できません。代表的なものに、他人の先行登録商標と同一・類似の商標(4条1項11号)、他人の氏名や周知な略称等を含む商標(同8号)、公序良俗に反する商標(同7号)、品質誤認を生じる商標(同16号)などがあります。名前を決める際は「識別力」と「先行商標との衝突」の両方の確認が必要です。先行調査の進め方は「商標登録を自分でやる手順」で解説しています。

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出典・一次情報

本記事の条文の引用は、以下の一次情報に基づいています(最終確認: 2026年6月11日)。

※ 3条1項3号の条文は長文のため一部を中略して引用しています。全文はe-Gov法令検索でご確認ください。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供であり法的助言ではありません。個別の判断は弁理士にご相談ください。記事中の例示は一般的な説明のためのものであり、特定の商標の登録可能性についての見解・保証ではありません。識別力の有無は指定商品・役務との関係や取引の実情により個別に判断されます。